シャキシャキおいしいこの野菜、普通は「セロリ」と呼ばれますが、原村では「セルリー」と呼びます。フランス語なまりで発音するとこうなるのだそうです。これからは皆さんもごいっしょに「セルリー」と言いましょう。
長野県はセロリ生産量日本一、年間約1万5千トン、全国の生産量の45.7%を長野県産が占めます(2017年度)。特に夏場は全国の9割が信州諏訪産だそうです。
セルリーは暑さに弱い野菜で、温暖化が進む近年は標高の高い原村はその中でも生産の中心地です。葉物野菜には小松菜やほうれん草のように1か月~2か月で収穫できるものもあるのですが、セルリーは約6か月かかる上、温度が高いと軟腐病という病気にかかり、逆に低いと大きくなる前に花が咲いて出荷できないというデリケートな野菜だそうです。さらにその上、シャキシャキしたおいしさのためには水はたっぷり必要で、新鮮さを保つために深夜1時からサーチライトの下で収穫し、冷蔵で出荷するという徹底ぶりです。
原村のゆるキャラは「セロリン」、村内を走るバスは「セロリン号」、地元のお菓子屋さんにはゆるキャラをかたどったお菓子「セロリン」もあります。原村のセルリー愛、強力です。そして、暑い日に畑に噴水のように水が吹き上がっているのは、夏の原村の風物詩です。サイクリングの途中でも畑にビニールパイプの潅水設備や、屋根やライトが付いた収穫用車両を見ることができますが、その裏には農家の皆さんのこんな苦労があったのですね。
水がたくさん必要なセルリー作り、茅野原村地域でかんがい設備といえば、「養川せぎ」なので、その水が畑に送られてきているのかと思いきや、江戸時代にコメ作りのために開削されたこの用水の水は田んぼ用なのだそうです。セルリーの畑に来ているのは八ヶ岳の伏流水。井戸を掘って配水しているそうです。地下水が豊富なのも火山岩で隙間が多い地質の特徴、こんなところにも八ヶ岳の恵みが生かされています。
E-チャリガイド
牛山 貴広(ウッシー)/競輪・スピードスケート
自転車で豊かな自然の中を走っている時に心地よい状態になれます。皆様にも一つの候補として、サイクルツーリズムを体験する中で、心の良い状態を実感してもらえることができたら幸いです。